山間の静かなテラスで眼下に広がる景色を眺めながらローストビーフを味わえるレストラン「THE・TERRACE(ザ・テラス)」(西宮市湯元町、TEL 0798-73-1076)が4月17日で25周年を迎えた。
ローストビーフを味わえるレストラン「THE・TERRACE(ザ・テラス)」
木立に囲まれたログハウスの店舗は、「緑の多い場所に住みたい」との思いから40年前に同店会長の北村武資さんが住居として構えたもの。「子どもが巣立ったのを機に売却しようと考えた時期もあった」が、かねて飲食業に携わり店舗経営の経験を持つ北村さんは、眺望の良い立地と建物を生かした「カフェ」にすることを思いつき、サンルームを増築して英国調の装飾と調度品、食器にこだわった同店を開業した。折からのテラスブームも追い風となり雑誌などで取り上げられ、多くの客が訪れるように。妻の晴實(はるみ)さんは、ビーチサンダルを履いて訪れたマナーの無い学生たちを叱りつけるなど、厳しくも優しい人柄で多くの客から「ママちゃん」と呼ばれて親しまれた。
開業から10年たったころ、カフェから料理メインのメニューにかじを切った。「10年残れるのは1000軒に1軒」という飲食業界の厳しさを知る北村さんは、「自信を持って出せる料理」として英国の家庭料理ローストビーフをメインメニューに据えることに。「英国では一般的な料理。週に一度、家族そろって行く礼拝から戻った後の大切なサンデーランチとして、下宿人もメードも、みんなで一緒に食卓を囲んで食べていた。家庭料理としては簡単な料理だが、時間がたったものは提供できずロスになるので管理が大変。ビジネスとして落とし込むのが難しい料理」と北村さん。
使う肉は、ニュージーランドの海岸沿いにあるフィードロットで穀物主体の飼料を十分に与えられて育った肉牛の最高級部位「ストリップロイン(サーロイン)」のみ。「牛肉の油脂は肉のうま味につながるが、比率が高くなると健康には望ましくない。脂質が少なく高タンパクで繊細な赤身肉の持ち味を、じっくり時間を掛けて最大限に引き出しているので、柔らかくておいしく、体にも優しい」と話す。
「ここに住み始めたころは芝生だったが、飛来する植物の種が芽吹いて庭の手入れが大変だから」という理由で設けたテラスには、同店と共に歴史を歩んだ樹齢40年のケヤキが枝葉を広げる。この空間がお気に入りだった晴實さんは10年前の4月初旬、開業15年を目前に逝去した。
以来、思いを継いだ次男の吉弥さんが北村さんと共に店を守り、盛り立てている。「先日、20年ぶりに訪れたという人が懐かしんでくれた。25年は山あり谷ありの連続。今はコロナと付き合い見据えながら、この先も時代に沿った形で、ここならではの絵を描いていきたい」と北村さんはほほ笑む。
5月5日までの営業時間は、ランチ=11時~17時、カフェ=14時~17時、ディナー=16時~20時。平日ディナーは予約制。 10歳未満の子どもやペットの同伴は不可。