認知症を抱えた人が接客する「まあいいかcafe(カフェ)」が9月17日、阪神鳴尾・武庫川女子大学前駅の「Lavy’s cafe」(西宮市里中町)で開催された。同店を経営するライフイノベーション(大阪市淀川区)が主催し、「まあいいかLabo きょうと」「NPO法人なごみ」「つどい場このゆびとまれ」などが協力した。
9月の「世界アルツハイマー月間」に合わせて開いた同企画。認知症の人が「働くこと」で「人と接する、社会とつながる」ことを実現した取り組みとなる。「まあいいかLabo きょうと」主宰の平井万紀子さんが、認知症を抱えた母の「働きたい」という希望をかなえるため、2018(平成30)年に始めた。介護関係者など多職種の協力を得て、京都府内を中心にホテルやカフェで開いている。
今回は7人の認知症の人がキャスト(ホールスタッフ)として、武庫川女子大看護学部の学生とペアになり接客を行った。注文を取り、厨房に伝え、完成した料理を運ぶ。テーブルには「あじさい」など花の名前を書いたプレートを掲示し、場所が識別しやすいように工夫を施す。店内には次々と、家族連れなどの客が来店した。
料理を注文した女性は「注文を何度も聞き直したり、震える手で伝票に字を一生懸命書いていたり、慣れない中でも頑張って生き生きと仕事していらっしゃる姿が印象的だった。通常のカフェと比べ、ゆったりした雰囲気が流れ、みんなが笑顔で見守る優しい空間だった」と振り返る。
平井さんは「初めはみんな緊張していたが、一緒に接客するうちに祖父母と孫の関係のように仲良くなっていた。間違えても、忘れても、失敗しても、受け入れて一緒に楽しむ。私たち社会の方が『まぁいいか』と受容することで、寛容な社会が少しずつ広がっていけば」と笑顔で話す。