「赤胴車」の愛称で親しまれ、2020年6月に引退した阪神電車の車両「7890号」が、都市再生機構(UR都市機構)武庫川団地(西宮市高須町)でコミュニティ-スペースとして再出発した。7月10日、同団地でオープニングセレモニーとイベントが行われた。
赤胴車は、上部をクリーム色、下部をバーミリオン(明るい赤色)の2色に塗り分けた車両の愛称。1958(昭和33)年に急行用として製造された車両の外装から採用され、当時の人気漫画のキャラクター「赤胴鈴之助」にちなんで愛称が付けられた。この塗装は、1984(昭和59)年から1995(平成7)年まで造られた8000系まで使われ、阪神電車のシンボルカラーとして親しまれてきた。
7890号の原型は、1974(昭和49)年に製造され、阪神本線の特急・急行の先頭車両として活躍した「3904号」。1986(昭和61)年にパンタグラフやモーターを追加する改造が行われ、武庫川線で運行を開始。7890号を含む赤胴車は、最後は武庫川線のみで運行され、引退した。
阪神電鉄とURは2020年3月、沿線のUR団地を中心とした地域の交流、活性化のために協力する包括連携協定を締結。この協定に基づき、7890号は阪神電鉄からURに譲渡された。車両は補修し、コミュニティ-スペースとして使えるように電気回路を再構築。安全対策を施して再塗装した後、武庫川団地内の広場に移設され、屋根などが整備された。
今後は、親子向け交流イベントやマルシェ、近くの武庫川女子大学と連携した幼児向けプログラムや健康相談会、団地内サークル活動の会場などとして活用される。
オープニングセレモニーでは、田中伸和UR理事・西日本支社長が「いろいろな使い方で我々と一緒に活動を進めていただければ」とあいさつ。武庫川団地自治会(高須自治協議会)の田邉繁会長が「鉄道ファンとしてもなかなかレアな車両。これからは武庫川団地のシンボルになる。いろいろな地域活動に利用し、大切に守っていきたい」と述べた。