ベーカリー「BAKE STAND(ベイクスタンド)」(芦屋市松ノ内町、TEL 0797-62-6699)が4月15日、芦屋・松ノ内町にオープンした。コンセプトは「たくましく(ぱりっぱり)、しなやかに(もっちもち)」。
かつて神戸に本社がある外食産業に従事していた店主の酒井健さんは、2015(平成27)年に独立して三宮にスタンドバーを開業したが、この時「パン屋にしようか悩んだ」という。25年前に親戚から手土産にもらって以来、ずっとひいきにしてきた神戸・青谷のパン店「エルム」の廃業と起業時期が重なったためだった。「外側はサクッと、中はモチッとした、かみしめ感のあるエルムのイギリス食パンは本当においしくて。その味を再現したかったが職人が見つからず、パン屋は後で、と諦めた」と当時を振り返る。
昨年、知人からパン店開業の提案を受けた酒井さんは、エルムの店主・西田政明さんに連絡を取り、「自分の店であの味を再現し、お客さまに喜んでもらいたい」と思いを伝えレシピの伝授を願い出た。思いを受けた西田さんは気持ちよく応じ、「頑張って焼いてくれ」と焼き型まで譲ってくれた。「いいものを使い、おいしく食べてもらいたい。安売りもしないし、食パンブームに乗る気もない。しんどくても、みんなで楽しいことをしよう」とスタートした同店は、神戸の人気パティスリーで10年にわたりパティシエとして活躍した西尾琢也さんと、大阪のホテルで研さんを積んだブーランジェ(パン職人)歴17年の越智賢治さんが酒井さんと共に腕を振るう。
幼いころからものづくりと甘いものが好きで、「自分の作ったものを誰かに提供できればという思いがあった」と話す西尾さん。「お客さまのニーズに合うものを相談しながら、常に思い描いたパンに近づけるよう挑んでいる。深みがあって味の濃い食べ応えのあるバゲットは、ぎりぎりまで焼いて香ばしさを出すと、表面はパリッと、中はモチモチして小麦の香りも生きてくる」と、秒刻みに変わる微妙な焼き加減にまでこだわりを見せる。
店内には、看板商品の山食「イギリス食パン」(1.5斤600円)のほか、ハードブレッド、クロワッサン、デニッシュ、調理パン、菓子パン、マリトッツォなど約40種類が並ぶ。
職人の手元が見えるよう、厨房はあえてオープンにした。「焼き上がりの香りは全部違う。味だけでなく香りのライブ感も楽しんでもらい、『またあの香りをかぎたい。あの店のパンやキッシュを持って友達の家に行こう』と思ってもらえる店でありたい」
「フランスの街にあるようなパン屋さんをしたいという酒井さんの思いと合致する部分があった」と話す越智さんは「パンは楽しい。おいしいし笑顔になる。個人店なので遊び心や冒険心を出してチャレンジし、新しい要素を取り入れていきたい」と意欲を見せる。「店には時折、西田さんが顔を出してくれる。エルムの味を受け継いだ名を汚さないようにしてプラスアルファの味を作り、周辺の方々に『これが欲しかった』と言ってもらえるパンを提供し続け、笑顔を届けたい」とも。
今後は夕方以降、立ち飲みバルを予定。「お客さまには商品だけでなく、おもてなしの気持ちが伝わる店でありたい。満足を提供し続けたい」と酒井さんは笑顔を見せる。
営業時間は9時~(売り切れ次第終了)。水曜と第1・3火曜定休。