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夙川の「瓦照苑」、日本の伝統舞台芸能「能」に親しむ場を提供

観世流シテ方・上田拓司さん

観世流シテ方・上田拓司さん

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 日本伝統舞台芸能「能」の観世流シテ方を担う上田家が、能に親しむ場として阪急夙川駅近くに構える自宅に併設する「夙川能舞台 瓦照苑(がしょうえん)」(西宮市相生町)を公演や稽古などに提供している。

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 能は「謡(うたい)」と「演技」を受け持つ「立方(たちかた)」、伴奏を受け持つ「囃子方(はやしかた)」から成り、立方にはシテ方、ワキ方、狂言方の3役がある。シテ方には5つの流派があり、観阿弥を流祖とする観世流はシテ方最大の流派で、優美で繊細な芸風が特徴としている。

 瓦照苑代表・上田拓司さんは「能はもともと民俗芸能で庶民に親しまれていたもの。いろいろな世代の方々にもっと親しく知ってもらえれば」と、瓦照苑での自主公演、個人稽古、入門教室、こども教室、1日体験教室など、能に触れる機会を広く提供。幼稚園児から80歳を超える人まで幅広く参加している。

 こうした取り組みは、1950年ごろに西宮北口で能や歌舞伎、文楽などが上演された日芸会館の建設や、小・中学校、高校、大学などで学校公演を始めるなど、能を身近に感じてもらえるように尽力した上田さんの祖父・上田隆一さんのころから始まったという。祖父の意を継ぎ「まずは地元から」と、大人だけでなく地元・夙川や苦楽園、芦屋の小学校でも教え始めた。

 「呼吸法の練習や発声、人の善悪など、子どもたちは目を輝かせて聞いてくれる。能は生き方という普遍的なテーマを考えさせられ宗教性の強いところもあるが、今の社会にも通じる大切なことに気付きを得られ、『気』を育むことができる。声を出すことや仕舞で体の内筋を使うことが健康に良いなど多様性も魅力。小さいころから知っていれば、大人になっても受け入れやすい」とも。

 1999(平成11)年に設立した瓦照苑の名は、かつての屋号「瓦屋」の「瓦」と、早逝した父・照也さんの「点を線にしたい」という言葉から、父と長男・宜照さんの名の『照』の字を使い、後世へ代々つなげられるように願いを込めて命名。東に夙川畔の桜や松の緑、西に六甲の山並みを望み、舞台には宋代の儒学者・朱子の「明鏡止水(めいきょうしすい)」の言葉を据えた穏やかな中にも格式ある空間が広がる。

 「およそ芸術、芸能と呼ばれるものは『人の幸せ』に関わること。地域で活動を続ければ、文化の香りがする地域になるお手伝いができるので、そうありたいと考えている」と上田さんは笑顔で話す。

 7月25日、9月30日には「研鑽能」を、7月23日には神戸・長田の上田観正会能楽堂で「青涼能」を開き、8月13日をめどに有料配信も行う。

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