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宝塚北高演劇科、コロナ禍の逆風に負けず卒業公演

左から担任の大上聡教諭、田邉誉成さん、鎗野菜穂子さん、演劇科長の石井美佐子教諭

左から担任の大上聡教諭、田邉誉成さん、鎗野菜穂子さん、演劇科長の石井美佐子教諭

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 コロナ禍で十分な練習時間が持てない中、短期集中で一丸となって稽古に挑んだ県立宝塚北高校(宝塚市すみれガ丘4)演劇科の生徒による「第35回演劇科卒業公演」が6月21日、兵庫県立尼崎青少年創造劇場ピッコロシアター(尼崎市)で行われた。

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 同高は1985(昭和60)年、全国で初めて演劇科を有する公立高校として開校。昨年逝去した劇作家の山崎正和さんは開校当初から同科と関わりを持つなど、ゆかりが深い。在学中に宝塚音楽学校に合格する生徒もあり、タカラジェンヌの実羚淳さん、夢妃杏瑠さん、早乙女わかばさん、綺咲愛里さん、俳優の千堂あきほさん、木南晴夏さん、松田岳さん、友石竜也さんなどが同科卒業生として知られている。

 卒業公演は生徒の自主性を生かし、生徒自らが話し合って決めながら進められた。昨年の夏休みに何をするか検討し始め、台本は泉鏡花の「夜叉ヶ池」を基に生徒4人が中心となって考案した「天撞(つ)く龍が如(ごと)く」に決定。「台本には講師陣がアドバイスし、舞台は演劇科の講師が中心になって指導し、音楽、踊りも別指導で行った。コロナ禍で例年の3分の1ほどの練習時間しか持てず、感染対策との兼ね合いに苦心した」と演劇科長の石井美佐子教諭。指導やアドバイスには担当教諭のほか、大蔵流狂言善竹家の善竹彌五郎さん、善竹隆司さん、善竹隆平さんなどが当たった。

 感染防止のため大声が出せず、対面稽古ができず、さらにはマスクで表情が隠れてしまうなど演劇にとって過酷な状況の中、教師や講師陣の指導を受けながら練習に挑み続けた。「演技は言葉ではなく呼吸と身体で伝えろ」と教わった。大道具、小道具、衣裳の製作には卒業生や後輩たちの応援を得るなど多くの力を受けて無事に公演日を迎えることができた。

 アシスタントディレクター役を演じた鎗野菜穂子さんは、「目に見えないものをどう表現するのか、死とは何なのか、自分自身とは何なのか、泉鏡花はなぜ最後に池から龍を出したのかなど、さまざまな壁に悩まされながら、限られた時間の中でどんな時も楽しむことを根底に置いて苦しさも全部楽しもうと思ってやってきた。支えてくれた先生方、先輩、後輩、家族など、周りの人に感謝している」と話す。

 ディレクター役を演じた田邉誉成さんは、「コロナで練習できず、『時間は有限』であることを痛感し稽古に対する意識が変わった。しっかり計画を立てて考えるようになった」と振り返る。「40人そろってするのは初めてのことで、熱意の違いなどでもめたこともあり、大人数でする難しさも体験した。みんなで一つのものを作り上げるまでに時間が掛かったが、何かある度にみんなで話し合い足並みをそろえた。コロナ禍だからこそ経験でき、学べたことを感謝している」と笑顔で話す。

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