阪神電鉄は10月31日、武庫川線を走り、「赤胴車」の愛称で親しまれた車両を都市再生機構(UR都市機構)に譲渡する引き継ぎ式を行った。譲渡したのは7890形で、2021年春をめどにURの武庫川団地(西宮市高須町1~2)の広場に設置される。
赤胴車は、上部をクリーム色、下部をバーミリオン(明るい赤色)のツートンカラーに塗り分けた車両の愛称。1958(昭和33)年・1959(昭和34)年に急行用として製造された車両の外装から採用され、当時の人気漫画のキャラクター「赤胴鈴之助」にちなんで愛称が付いたといわれている。
その後に製造された車両にもこの配色が採用されたことから、半世紀以上にわたって阪神電車のシンボルカラーとして親しまれてきた。車両の老朽化が進み、最後は武庫川線のみで運行していたが、今年6月に引退。コロナ禍のため、セレモニーなども行われなかった。
阪神電鉄とURは今年3月、沿線のUR団地を中心とした地域の活性化のため、子育て支援や健康づくり、地域交流などの施策で相互に協力する包括連携協定を締結。その中に、赤胴車をURに譲渡し、武庫川団地内に設置するという連携施策が盛り込まれていた。
引き継ぎ式には、子ども18人を含む武庫川団地の住民や阪神電鉄、URの関係者ら約80人が出席。尼崎駅管区の福崎信次駅長が子どもたちに、かつて赤胴車で使われていたブレーキハンドルや、一人一人の名前が入った「赤胴車贈呈証明きっぷ」を手渡した。
式の終了後、子どもや保護者らが「ありがとう阪神電車→よろしくねUR武庫川団地」と書かれた手作りの方向幕が表示された車両の内部を見学した。西宮市立高須西小学校2年の男子児童は「赤のラインがかっこいい」と話し、同級生の男子児童は「早く近くで見たいので、予定通りに団地に来てほしい」と期待を込めた。
阪神電鉄やURの担当者によると、同車両は今後、武庫川団地で集会所やイベントスペースなどのコミュニティースペースとして利用されるという。